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​漆芸

SHITSUGEI
乾漆偶像《 聖牛童子 ナンディ 》

YOSHINO, Takamasa

​吉野 貴将

About

制作に対する想い

Passion for my works
命を慈しむ心。そこから紡がれる乾漆偶像の姿を求めて

幼少期から、絵を描いたり物を作ったりするのが好きだった私は、21歳の時にある人形作家の作品に深い感銘を受けた。その作家の人形には、何か例えようのない特別な魅力を感じた。私もこういう作品を生み出せる作家になりたいと、その時強く思ったのを覚えている。見様見真似で人形を作るうちに、その人形を観た方々の価値観とつながり合える喜びを知り、味わった事のない自己肯定感が芽生え、心の中が幸福で満たされていく経験をしてきた。今思い返せば、私が人形を作る原点はここにある気がしている。そして、ただ作りたい人形を作るだけの考えは、旅先である経験をした事と漆という素材の魅力を知った事で大きく変化する事になった。


大学生時代、約1ヶ月かけて中国からチベットを旅した。ある日、昼食をとった食堂の裏庭で小さな檻を見つけた。何の気なしに檻の中を覗くと、そこには一生懸命に餌をついばむ鶏やウサギ達の健気な姿があった。しかし、その可愛らしさに目を奪われ檻に近付いた私は、鼻先にまとわりついた生臭い匂いによって想像すらしなかった衝撃を受ける事になった。匂いの元を辿り檻の上に敷かれたトタン板に視線を移すと、その上には解体されたウサギの肉が干されていたのだ。私が捉えようとしていた目の前の景色にはその現実が全く見えていなかった。私は、彼らが食用となる運命である事をその瞬間まで気づくことも出来ず、その事に関して無知で無意識だった自分自身の感性にも大きな挫折感を抱いた。私の命も彼らの命も繋がりあっているという事実。そして、その事実を自覚した時に見えた彼らの一生懸命に餌を啄ばむ姿や力強い眼差しに、私は畏敬の念を抱かずにはいられなかったのだ。命はどう生きるべきか、その在り方や在り様、理までをも彼らの生きる姿に教えてもらった気がした。私は、この学びを与えてくれた彼らに対する感謝の思いを作品にしたいと強く思い、また漆という素材の魅力を用いれば見た事もない素晴らしい作品が生まれてくれるという自信が芽生えた。これは、今まで人形を作る時の動機とは全く異なる感情だった。そしてこの思いが卒業制作となり、観る人の心に感動を与えそれが自身の喜びとなって返ってくる経験を再びした時、以前のそれとは別格の達成感を感じ、私が作品を作る本当の意義や目的を初めて見出せた気がしたのだ。


あらゆる命の存在に視線や心を傾け、そこから多くの学びや感動を享受し、一つ一つの物語を紡ぎだして作品表現する。それが私が辿り着いた作品テーマである。私が自身の作品を“人形”ではなく“偶像”と定義しているのは、その言葉の持つ“憧れや崇拝の対象”という意味に自身の作品テーマと共通する理念を感じているからだ。また、漆という素材を用いる理由もそこにある。自然が育んだ命そのものである漆には、先人達が積み重ね研鑽してきた漆工技術を施してこそ初めて具現化できる、唯一無二の神秘的な魅力が眠っている。私はその神秘の魅力の中に、自身の目指す新たな偶像表現の可能性を感じているのだ。

私が生み出す作品がこの時代にとってどのような意味があるのかはわからない。しかし、この想いを大切に一つ一つの偶像作品を大切に生み出していきたいと思っている。そして願わくは、漆文化の継承のためにも、自身の作品を通して漆という素材の魅力をより多くの方々に知って頂きたいと切に祈っている。

作品要旨

漆芸の伝統技術(乾漆、蒔絵、螺鈿)を用いて、人や動物などの偶像作品を作っています。命を慈しむ心とそこから紡がれる物語をテーマに、漆の魅力を生かした新しい“乾漆偶像”の世界を表現したいと思っています。

Works

​作品

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Profile

​プロフィール

Profile

吉野 貴将 YOSHINO, Takamasa

1976

吉野貴将先生

2003

東京芸術大学美術学部工芸科漆芸専攻 卒業

東京都世田谷生まれ

2005

東京芸術大学大学院美術研究科工芸専攻漆芸研究分野修士課程 修了

2008

東京芸術大学大学院美術研究科美術専攻 

 工芸研究領域漆芸分野博士後期課程 修了

学位博士号(美術)取得 博美第224号

2008.4 ~ 2011.3

東京芸術大学美術学部工芸科工芸基礎研究室教育研究助手

2008~現在

漆芸作家、日本文化財漆協会理事

 

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